山門には、一枚岩でできたものでは日本一であるという石造仁王像が出迎えてくれます。この仁王像は、境内の石塔、石仏、石垣などとともに、裏山の観音堂、東側の大石山から切り出されたもので、凝灰質砂岩が使われています。この砂岩は、「岩殿沢石」として江戸時代から石材として秩父地方で多く利用されてきました。札所4番金昌寺の石仏群もこの岩殿沢石で造られており、「功徳石」と呼ばれ、巡礼者が運んだといわれています。
296段もの石段を登っていくと、巨大な岩壁を背後に観音堂があり、神秘的な雰囲気に包まれています。お堂の周りの岩壁は、盆地内の最下部の地層(約1700万年前の新第三紀中新世)で、石英や長石の小石のまじった砂岩でできています。秩父盆地が陥没し、海が入り始めたころに堆積したものです。こちらでは、斜交葉理(しゃこうようり)と呼ばれる堆積時の海底の水の流れの跡を示す薄い層も見られます。各所にある岩窟には石仏が納められ、秩父札所が修験道から起こったことを感じさせます。
高さ30mもある「清浄の滝」の左手の岩壁には、たくさんの小さな磨崖仏(まがいぶつ)がびっしりと刻まれています。埼玉県指定史跡「鷲窟(しゅうくつ)磨崖仏」です。かつては岩壁一面にあったともいわれています。室町時代の作であり、弘法大師(空海)が一夜にして彫ったとの伝説もあります。
奥の院へいくと「馬の足跡」と言われる風化岩があります。堆積物の中に二次的にできた球状の塊(ノジュール・団塊)の断面が、馬の蹄鉄のように見えることから名づけられたものといわれています。